精密部品・光学部品・医療機器・食品製造の洗浄工程では、汚れを落とす力と同じくらい、 洗浄剤そのものを残さないことが品質を左右します。還元ミネラルイオン水 ST-A は、 界面活性剤も防腐剤も使わず、水の物性で洗う工業用の洗浄水です。
洗浄工程で起きがちな3つの課題
界面活性剤の残留
洗浄剤が落ちたかどうかは、汚れが落ちたかどうかより確認しにくいものです。 すすぎ残りは、コーティングの密着不良や製品への持ち込みという形で、 後工程になってから現れます。
工程の多段化と排水処理
残留を抑えるためにすすぎ段数を増やせば、槽と時間と水の使用量が積み上がります。 界面活性剤を含む廃液は処理の手順も増やし、負荷が工程の前後に広がります。
素材への腐食懸念
アルカリ洗浄剤は洗浄力の一方で、アルミ・銅などの非鉄金属や光学面への影響が 気になります。素材を守るために洗浄力を妥協する、という選び方になりがちです。
ST-A で何が変わるか
ST-A はアルカリ性の水です。洗浄機構を、測定できる物性に分けて説明します。
界面で剥がす、という洗浄のしくみ
はじまりは、すき間に入り込めることです。一般的な水は表面張力が高く、密着した汚れと素材のあいだへは入っていけません。ST-A は表面張力が低いためそこへ入り込み、汚れの裏面と素材の表面の両方に触れます。触れた両面がどちらも負に帯電し、電気的に反発して剥離します。 界面活性剤のように汚れを包み込んで液中に保持するのではなく、界面で引き剥がす—— このしくみの違いが、洗浄後に残る成分の違いになります。
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1 密着している
汚れは素材に密着しています。ふつうの水は表面張力が高く、このすき間には入っていけません。
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2 すき間に入り込む
ST-A は表面張力が低いため、汚れと素材のあいだへ入り込みます。ここが剥離の起点です。
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3 両面が負に帯電する
入り込んだ液が汚れの裏面と素材の表面の両方に触れ、どちらも負に帯電します。
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4 反発して、剥がれる
負と負が反発し合い、汚れが素材から離れます。溶かして落とすのとは別の経路です。
組成から「残さない」
組成はほぼすべてが水と、わずかなミネラル塩です。界面活性剤も防腐剤も使っていないため、 すすぎで管理すべき残留成分がそもそも少ない。多段すすぎを要求清浄度に合わせて 見直す余地が生まれます。
アルカリ性でも、液性は弱塩基
アルカリ性の液です。素材への当たりは pH の値だけでは決まりません。 pH12(25℃・測定済み) 非鉄金属や光学面など、これまでアルカリを避けてきた素材でも検討の対象になります。
低い表面張力が細部に届く
一般的な水より低い表面張力が、微細な隙間・止まり穴・複雑な形状への濡れを助けます。 一般的な水より低い表面張力 油分は乳化・分散のはたらきで扱います。
洗浄槽の運用
防腐剤を加えずに保管できる液の性質は、洗浄槽の液管理にも関わります。 交換サイクルを含めた運用条件は、検証のなかで確かめていきます。
ここに書いているのは液の物性です。洗浄の仕上がりは汚れの種類・素材・設備条件によって 変わるため、効果はサンプル検証で確かめる前提でご案内しています。
なぜ、そうできるのか
なぜ、界面活性剤を配合していないのか
界面活性剤は、界面張力を下げてぬらす、汚れを乳化・可溶化する、いったん落ちた汚れの再付着を抑える——複数の作用で洗います。「包み込むだけ」ではありませんし、種類によっては静電的な反発で剥がす働きも持ちます。ST-A について言えるのは、その界面活性剤を配合していないという組成の事実と、アルカリ性のもとで汚れと素材の表面がどちらも負に帯電し、電気的に反発する経路を使っていることです。
残留量は、成分の吸着性とすすぎ条件で変わります。「界面活性剤を配合していないから何も残らない」とは言えません。また、アルカリは油分に対してその場でけん化を起こし、脂肪酸塩(石けん)を生じることがあります。「界面活性作用がない」わけではない、という点はご承知おきください。
一般的なアルカリ電解水との違い
アルカリ電解水は、電解質を溶かした水を電気分解して陰極側に取り出す液です。陰極では 2H₂O + 2e⁻ → H₂↑ + 2OH⁻ が起こり、そこへ陽イオン(Na⁺ や K⁺)が移動してくるため、結果として水酸化物の水溶液になります。これがアルカリ電解水の成り立ちです。
汚れを化学的に分解して落とすのが溶解型、界面から剥がして落とすのが剥離型です。溶解型は汚れだけでなく素材側にも作用しうるため、アルカリ電解水の製品では、アルミなどの両性金属や手指への使用に注意が置かれているのが一般的です。ST-A は剥離型で、汚れそのものを分解しません。
アルミ箔で見ると、違いが目で分かる
アルカリ性の液とアルミのあいだには 2Al + 2NaOH + 6H₂O → 2Na[Al(OH)₄] + 3H₂↑ の反応があります。水素が出るので、アルミ箔に塗れば発泡として 目で分かります。アルカリ電解水の製品でアルミへの使用に注意が置かれるのは、これが理由です。 上の2枚は、それぞれの液をアルミ箔に塗ったときの様子です。
pH12(25℃・測定済み)
物性
| 液性 | pH12(25℃・測定済み) |
|---|---|
| 表面張力 | 一般的な水より低い表面張力 |
| 組成 | ほぼすべてが水と、わずかなミネラル塩 |
| 界面活性剤 | 不使用 |
| 防腐剤 | 不使用 |
| 腐食性 | 素材適合性は材質・条件ごとに要確認(pH だけでは決まらない) |
数値データは承認済みのものから順次掲載しています。詳細な試験成績書はサンプル請求時にご案内できます。
安全性試験・保存・成り立ちを含む一次情報は、データで見る ST-A に1か所でまとめています。
導入の流れ
- ヒアリング — 洗浄対象・現行の洗浄剤・課題(残留・工程長・排水・素材)を伺います。
- サンプル提供 — 試験用の ST-A をお送りします。詳細な試験成績書もこの段階でご案内できます。
- 実部品での検証 — 現行工程と並走させて評価いただきます。希釈条件・温度・すすぎ条件など、 工程に合わせた設定をご一緒に詰めます。
- 本採用のご判断 — 検証結果をもとにご判断ください。継続供給の条件はこの段階でご相談に応じます。
よくある質問
- アルカリ性と聞くと、アルミや銅への影響が心配です
- ST-A はアルカリ性の液です。pH の値だけで素材適合性は決まりませんが、逆に「pH が高くても大丈夫」と言い切れるものでもありません。材質・表面処理・濃度・温度・接触時間の組み合わせで結果が変わるため、腐食・変色・寸法・光学特性への影響は実部品でご確認いただく前提でご案内しています。
- 超音波洗浄槽やスプレー洗浄機でも使えますか
- 水系の洗浄プロセスであれば、既存の設備にそのまま組み込む形でご検討いただけます。キャビテーションと併用する使い方も含め、設備の材質(ゴム・樹脂系パッキンなど)との適合は検証時にあわせてご確認ください。
- 洗浄後のすすぎ工程はどう考えればよいですか
- 組成がほぼ水とわずかなミネラル塩のため、界面活性剤系の洗浄剤とくらべて、すすぎで落とすべき成分が少ないのが特徴です。要求される清浄度は製品ごとに異なるため、すすぎ条件は実工程での検証結果をもとに設計することをおすすめします。
- 排水処理はどう変わりますか
- 界面活性剤・防腐剤を含まないぶん、廃液の処理設計は単純になります。ただし排水基準は自治体・事業所ごとに異なるため、ご使用の条件にあわせてご確認ください。
- 業務用のサンプルや資料はもらえますか?
- 各用途ページの下部にあるフォームから、サンプル・資料をご請求いただけます。用途と課題をお書き添えいただくと、ご案内が具体的になります。
- 原液のまま使いますか?薄めて使いますか?
- 用途によって異なります。原液で使う場面と、希釈して使う場面の両方があります。各用途ページの使い方の項をご覧ください。
サンプル・資料のご請求
洗浄対象と現行の洗浄剤をお知らせいただけると、検証条件のご提案までが早くなります。